TI-Nspireガイドブック和訳改訳「ライブラリー」

(1/7)ライブラリー  

「ライブラリー」とは、ライブラリー・オブジェクトとして定義された変数、函数、プログラムの集合体から成るドキュメントのことです。 

普通の変数、函数、プログラムは、その変数、函数、プログラムの定義されたプロブレム内でしか使用できませんが、ライブラリー・オブジェクトは、どのドキュメントからでもアクセスできます。[Catalog]カタログに表示されるパブリック・ライブラリー・オブジェクトを作成することも可能です。 

たとえば、パブリック・ライブラリー函数diagwithtrace()とプライベート・ライブラリー函数errmsg()とから成るライブラリー・ドキュメントmatrixを作成したとしましょう。

函数diagwithtrace()は、正方行列(square matrix)の主対角線(diagonal)の各要素を表示するとともに、主対角線の各要素の和を計算するユーザー定義函数です。(訳註:diag()は、正方行列の左上角から右下角まで並んでいる各要素を1行の行列にする組込函数。trace()は、正方行列の左上角から右下角まで並んでいる各要素の総和を求める組込函数入力が正方行列でない場合(rowDim(m)≠colDim(m)の場合)は、ユーザー定義函数errmsg()呼び出されます。呼び出されたerrmsg()は、しかるべきエラー文字列(Error: matrix is not square)を返します。

f:id:ti-nspire:20150122141155j:plain 

現在開いているプロブレムで定義した行列mの主対角線の1行行列の表示および主対角線の総和の計算は、次の構文で実行できます。 

matrix\diagwithtrace(m)
(<
ドキュメント名>\<ライブラリー名(<引数>)>)

  

(2/7)ライブラリーおよびライブラリー・オブジェクトを作成する 

ドキュメントは、指定のライブラリー・フォルダーに保存またはコピーされればライブラリーと見なされます。ライブラリー・フォルダーのデフォルト・ロケーションは以下のとおりです。 

  • Windows®:My Documents\TI-Nspire\MyLib 
  • Mac®:Documents/TI-Nspire/MyLib 
  • ハンドヘルド:MyLib 

上記のフォルダーをうっかり削除した場合は、元どおりに作成し直さないとライブラリーが使用できません。 

ライブラリー・オブジェクトは、Program EditorでもCalculatorアプリケーションでも定義できます。ライブラリー・オブジェクトは、Defineコマンドで定義しなければならず、かつライブラリー・ドキュメントの先頭のプロブレムに記述しなければなりません。

Program Editorを使ってライブラリー函数またはライブラリー・プログラムを定義する場合は、定義したライブラリー・オブジェクトを保存したうえで、さらにライブラリー・ドキュメントも保存しなければなりません。ライブラリー・ドキュメントを保存しても、ライブラリー・オブジェクトは自動的には保存されません。詳しくは「Program Editor入門」を見てください。

ライブラリー・ドキュメントおよびライブラリー・オブジェクトの命名規則は以下のとおりです。 

  • ライブラリー・ドキュメント名:1~16文字の有効な変数名であること。ピリオドを含んではならない。下線を先頭文字にしてはならない。
  • ライブラリー・オブジェクト名:1~15文字の有効な変数名であること。ピリオドを含んではならない。下線を先頭文字にしてはならない。

 

(3/7)プライベート・ライブラリー・オブジェクトとパブリック・ライブラリー・オブジェクト

ライブラリー・オブジェクトを定義するときは、プライベート(LibPriv)、パブリック(LibPub)のいずれかのライブラリー・オブジェクトして指定します。 

Define a=5

     aはライブラリー・オブジェクトではありません。 

Define LibPriv b={1,2,3}

     bは、プライベート・ライブラリー・オブジェクトです。 

Define LibPub func1(x)=x^2 - 1

     func1は、パブリック・ライブラリー・オブジェクトです。 

プライベート・ライブラリー・オブジェクトは、[Catalog]には表示されませんが、そのオブジェクト名を入力すればアクセスできます。プライベート・オブジェクトは、基本的で単純なタスクを実行するビルディング・ブロックとしてかなり役に立ちます。一般にプライベート・ライブラリー・オブジェクトは、パブリック函数およびパブリック・プログラムから呼び出す用途として使われます。

パブリック・ライブラリー・オブジェクトは、ライブラリーをリフレッシュしたあと[Catalog]の[Libraries]タブに表示されます。パブリック・ライブラリー・オブジェクトは、[Catalog]からもアクセスできるし、そのオブジェクト名を入力してもアクセスできます。

Mac®のみ:TI-Nspireバージョン1.4では、ライブラリー・ドキュメント名にÖ、á、ñのような拡張文字を含めることはできません。

パブリックとして定義されたライブラリー・プログラムおよびライブラリー函数の場合、PrgmかFuncかいずれかの行の直後に記述されたコメント行(©)は、自動的に[Catalog]にヘルプとして表示されます。このヘルプには、たとえば構文などを示すことができます。

 

短い名前、長い名前を使う 

オブジェクトを定義したのと同じプロブレムを開いているときはいつでも、そのオブジェクトの「短い名前」を入力することでオブジェクトへアクセスできます(「短い名前」とは、Defineコマンドで指定した名前のことです)。(訳註:要するに函数自体、プログラム自体の名前のこと)このことは、プライベート・オブジェクト、パブリック・オブジェクト、ライブラリー以外のオブジェクトなど、定義されたどのオブジェクトでも共通です。

「長い名前」を入力すれば、どのドキュメントからでもそのライブラリー・オブジェクトへアクセスできます。「長い名前」とは、<オブジェクトのライブラリー・ドキュメント名>\<オブジェクト名>という形式の名前のことです。たとえばライブラリー・ドキュメントlib1の中でfunc1として定義されたオブジェクトの「長い名前」はlib1\func1です。ハンドヘルドで“\”を入力するときはf:id:ti-nspire:20150121152858j:plainの順に押してください。 

オブジェクトの正確な名前が思い出せない場合、またはプライベート・ライブラリー・オブジェクトに必要な引数の順番が思い出せない場合は、当のライブラリー・ドキュメントを開くかProgram Editorを使うかすれば、そのオブジェクトの内容を見ることができます。getVarInfoを使えば、同じライブラリーに含まれているオブジェクトのリストを見ることができます。

 

(4/7)ライブラリー・オブジェクトを使う 

ライブラリー変数、ライブラリー函数、ライブラリー・プログラムのいずれかを使う場合は、その前に必ず以下の手順が実行済みであることを確認してください。 

  • オブジェクトがDefineコマンドで定義されていること。そのDefineコマンドでLibPriv、LibPubのいずれかの属性が指定されていること。
  • 目的のオブジェクトがライブラリー・ドキュメントの先頭のプロブレム内に配置されていること。ライブラリー・ドキュメントが、指定のライブラリー・フォルダーに格納されていて、かつ命名規則に従っていること。 
  • Program Editorを使ってオブジェクトを定義した場合は、そのオブジェクトが[Program Editor]メニューの[Check Syntax & Store]で保存済みであること。 
  • ライブラリーがリフレッシュ済みであること。

 

ライブラリーをリフレッシュする

▶ ライブラリーは、リフレッシュしないと、自分のドキュメントで使えるようにはなりません。 

-      [Tools]メニューから[Refresh Libraries]をクリックしてください。

ハンドヘルド:f:id:ti-nspire:20150122141636j:plainを押してから[Refresh Libraries]をクリックしてください。

 

パブリック・ライブラリー・オブジェクトを使う 

  1. ライブラリーをリフレッシュします。 
  1. ライブラリー変数、ライブラリー函数、ライブラリー・プログラムを使いたいアプリケーションを開きます。

函数はどのアプリケーションでも実行できますが、プログラムはCalculatorおよびNotesでしか実行できません。 

  1. [Catalog]を開き、[Libraries]タブを使って目的のオブジェクトを見つけて挿入します。 
  1. 引数が必要な場合は、括弧内にその引数を入力します。

 

プライベート・ライブラリー・オブジェクトを使う 

  1. ライブラリーをリフレッシュします。 
  1. ライブラリー変数、ライブラリー函数、ライブラリー・プログラムを使いたいアプリケーションを開きます。

函数はどのアプリケーションでも実行できますが、プログラムはCalculatorおよびNotesでしか実行できません。

  1. lib1\func1()のようにオブジェクト名を入力します。 

函数、プログラムのいずれの場合も、そのオブジェクト名のうしろに必ず括弧をつけてください。ハンドヘルドで“\”を入力するときはf:id:ti-nspire:20150121152858j:plainを押してください。 

  1. 引数が必要な場合は、括弧内にその引数を入力します。 

 

(5/7)ライブラリー・オブジェクトへのショートカットを作成する 

libShortcut()を使ってオブジェクトへのショートカットを作成すれば、ライブラリー内のオブジェクトへもっと簡単にアクセスできるようになります。この操作を行うと、指定したライブラリー・ドキュメント内にあるすべてのオブジェクトへの参照を含んだ変数グループが現行プロブレム内に作成されます。プライベート・ライブラリー・オブジェクトは、この処理に含めることも、この処理から外すこともできます。 

たとえばライブラリー・ドキュメントlinalgの中に、clearmat、cofactor、gausstep、help、inversestep、kernelbasis、rank、simultstepという各函数が含まれているとします。libShortcut(“linalg”,“la”)を実行すると、以下のメンバーを含んだ変数グループが作成されます。 

la.clearmat

la.cofactor

la.gausstep

la.help

la.inversestep

la.kernelbasis

la.rank

la.simultstep

こうして生成された変数名を入力するか[Variables]メニューで選択するかすれば、現行プロブレム内で元のライブラリー・オブジェクトが参照できます。 

libShortcut()の用法について詳しくはReference Guide を参照してください。 

 

(6/7)附属ライブラリー 

ライブラリーは是非活用してほしいので、TI-Nspire™には、便利な線形代数函数を含んだライブラリー・ドキュメントが最初から附属しています。附属ライブラリーの名前はlinalgまたはlinalgCASです。指定のライブラリー・フォルダーに格納されています。

ハンドヘルドのOSをアップデートした場合、またはTI-Nspire Softwareをインストールし直した場合、附属ライブラリーはすべてデフォルト・フォルダーに配置されます。附属ライブラリー内のオブジェクトを編集した場合、または同じ名前の別のドキュメントに附属ライブラリーを置き換えた場合は、アップデートもしくは再インストールを行うと、それ以前の変更は上書きされます。バッテリーを交換した場合、またはハンドヘルドをリセットした場合も、同じことの起きるおそれがあります。

 

(7/7)附属ライブラリーを復元する 

附属ライブラリーは、うっかり削除したり上書きしたりしても、インストールDVDから復元できます。 

  1. インストールDVDを開いてlibsフォルダーへ移動します。 
  1. 復元したいライブラリー・ファイル(線形代数ライブラリーの場合はlinalg.tnsまたはlinalgCAS.tnsなど)を見つけます。
  2. 見つけたファイルをコピーします。 

-      Windows®:指定のライブラリー・フォルダーへコピーしてください。デフォルト・ロケーションはMy Documents\TI-Nspire\MyLibです。

-      Mac®:指定のライブラリー・フォルダーへコピーしてください。デフォルト・ロケーションはDocuments/TI-Nspire/MyLibです。

-      ハンドヘルド:ハンドヘルドをPCに接続し、TI-Nspire Softwareを開き、目的のライブラリー・ファイルをハンドヘルドのMyLibフォルダーへコピーしてください。 

  1. 新しいライブラリー・オブジェクトを起動します。 

-      TI-Nspire™ Softwareの[Tools]メニューから[Refresh Libraries]をクリックしてください。

ハンドヘルド:f:id:ti-nspire:20150122141636j:plainを押してから[Refresh Libraries]をクリックしてください。