season 2 1/12
草冠に「厂(がんだれ)」、またその下に「逆」みたいな字、の隣に「欠」と書いて「蕨(わらび)」。15画の世界に秘められたうぶな田舎娘を思わせるその響。山で暮らす君は千年以上も前から人々に愛されてきたんだね。朝食にそっと添えられた君のおひたし。大好きだよ。でも灰汁をしっかり抜かないと体に悪いそうじゃないか。一筋縄ではいかないんだな。あぁ蕨よ、朝食の主役、シャケの塩焼きをも凌駕するアクの強さ。そんな君はまさに 植物界のホアキン・フェニックス。アクの強い君のシルエットと演技に誰もがとりこ。僕には聞こえるよ、君の心の叫びが。俺はラッセル・クロウのかませ犬じゃないぞ。その昔、源氏物語にも登場し、萬葉集には君のことを歌った歌もあるそうじゃないか。
石走る垂水の上の早蕨の萌え出づる春になりにけるかも
(いはばしる たるみのうへの さわらびの もえいづるはるに なりにけるかも)
志貴皇子(しきのみこ)
あーい。んん。ごめん。思わずエア百人一首みたいになってしまったよ。あぁ蕨、早春のシニョリーナ。ぷるんとした愛おしい君をどうか一口食べさせておくれ。ビーバワラビーノ。
