season 2 5/12
草冠に「ほどこす」と書いて葹(おなもみ)。12画の世界からあふれ出すどこか耽美なその響。小粒ながらその突起が愛くるしい魅惑のシルエット。君を見るたびに蘇る甘酸っぱーい思い出。小学生だったボクは、「ひっつき虫」と呼ばれた君を、好きだった子の服に投げつけていたずらしたものだ。あの頃のボクは、そう、チェリーボーイ。そんな君の先っぽは鉤(かぎ)のようで、一度ついたらなかなか離れない。触れるものにひっつき、身を任せるように流浪して繁殖する。その姿はまさに植物界のさすらいのヒットマン、阿修羅・原。大胆、無頼、そして見栄っ張り。天龍源一郎と強固なまでにひっつき、時にはえぐい外敵の攻撃を受けながらも決して勝負をあきらめなかったさすらいの男。ああ、オナモミ、 最近見ないと思ったら、とんでもない外敵の脅威に苦しんでいたんだね。外来種「オオオナモミ」が君の生育を妨げ、おかげで絶滅危惧種に指定されてしまったそうじゃないか。けどボクには君とオオオナモミの違いはよくわかんないし、まさか、あの子に投げたのもオオオナモミ? 紛らわしいし、言いにくい。さすらいの植物オナモミ。ファンに惜しまれながらこの世を去った阿修羅・原のように、君の勇姿をもう見ることができないなんて。お別れにこれだけは言わせておくれ。au revoir (オルボア)、オナモミー。
