season 2.5 3/4
Century Plant
センチュリー・プラント
(プヤ・ライモンディ)
百年前、風通り抜けるこの谷で、わたしセンチュリー・ プラントは生まれた。百年かけてわたしの体は三メートルになった。人も植物も標高四千メートルのこの荒涼な大地で生きていくにはあまりにも厳しかった。あと一か月、わたしの命もようやく消えようとしている。でもわたしにはまだやることがある。百年間蓄えた栄養で今こそ咲きほこるの。そして天高く伸びるの。大豪院邪鬼(ダイゴウインジャキ)くらいの大きさに。わたしの千枚の葉には人や動物を傷つけてしまう棘があるけれど、ハチドリさん、おいで、さ、ほら、こわくない、こわくない、ほらね、こわくない、甘いでしょ。百年に1回、たった一か月だけの花。その一万の花が七十万の種(たね)に変わるとき、わたしは枯れて死ぬ。わたしの七十万の子どもたち。さぁ、みんな、出発しなさい。どんなに苦しくとも、シリウスに向かって飛べ。