葱(ねぎ)

season 2 3/12

ネギ
ヒガンバナ科ネギ属

草冠に「忽ち(たちまち)」っぽい字を書いて「葱(ねぎ)」。12画のその世界からたゆたう(たゆとー)鼻の奥を刺戟するその香り。白と緑の鮮やかなコントラスト。凜とした佇まい。中央アジアが原産といわれ、凍てつく冬の寒さにも決して萎えることはない。むしろその寒さは君を淫靡に太らせてくれたね。んーん。風邪をひいたとき僕は焼いた君を首に巻く。すると毛穴という毛穴から汗が噴き出し、僕を慰める。江戸時代には死人の鼻や耳に君を差し込むことで蘇ると信じられていた。ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロが知ったら、ふっ、何て言うかな。あぁ、ネギ。蕎、冷や奴、すき焼き、主役を引き立てるためだけに君はいつもただそこにいた。そんな君はまさに植物界の名脇役岸田森(きしだ しん)。スターの陰で怪演を見せ、数々の作品を唯一無二のものにした岸田のように、ネギのない納豆は何か僕に虚無感を抱かせる。生前、岸田はこんな言葉を残している。わずかな出番で作品の印象を一変させるような脇役を目指したい。お別れにこれだけは言わせておくれ。ネギボナペティート。こんばんネギネギ。

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