ヘリウムは少年

翻訳の世界, 1982年12月号, p.65, 日本翻訳家養成センター
(原文は縦書き)

「訂正ならびに弁明と世界観の差異に基づく異文化ショックの考察」
井筒三郎
 別冊翻訳の世界1『実践翻訳読本』誌上において自動翻訳機について述べましたが、その導入部に、通商産業省工業技術院電子技術総合研究所パターン情報部推論機構研究室で開発された翻訳機械に“He is a boy.”を入力すると「ヘリウムは少年である」と「詩的(!)に翻訳されるファンタスティックな光景を眼(ママ)のあたりにする」――と書いてしまいました。ところが実際には、通商産業省工業技術院電子技術総合研究所パターン情報部推論機構研究室で開発された翻訳機械に“He is a boy.”と入力しても「ヘリウムは少年である」という詩的言語は出力されず、ただ「彼は少年である」という語学的な訳文が出力されるのみなのです。(略)ただし“He is a gas.”は「ヘリウムはガスである」と翻訳されます。(略)

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