雷センサーAS3935データシート非公式訳

概要

(略)

主な特長

(略)

用途

(略)

ブロック図

AS3935の機能ブロックを下に示します。

図2: AS3935のブロック図
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ピン配置

A3935のピン配置を下に示します。

図3: A3935のピン配置(上から見た図)
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図4: ピンの説明
(略)

絶対最大定格

(略)

電気的特性

(略)

代表的な動作特性

(略)

詳しい説明

AS3935は、雷活動を伴う嵐が近づいているかどうかが検出できます。また、そうした嵐の前縁までの距離(嵐の外縁部のうち、最も近い外縁部からAS3935までの最短距離のこと)も推定できます。距離推定アルゴリズムがハードウェアとして作り込まれていて、雷の検出されるたびにIRQピン(「割り込みの管理」を参照)から割り込み信号が出ます。距離推定レジスタに書き込まれる推定距離は、発生した個々の雷までの距離ではなく、嵐の前縁までの推定距離です。それを図17に示します。

図17: 嵐
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図18~21に示したように、(略)

インターフェイスの種類(SPI、I2C)を選ぶときは、(略)

図18: 電圧レギュレーターをOFF、SPIを使用する場合の回路例
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図19: 電圧レギュレーターをOFF、I2Cを使用する場合の回路例
(略)

図20: 電圧レギュレーターをON、SPIを使用する場合の回路例
(略)

図21: 電圧レギュレーターをON、I2Cを使用する場合の回路例
(略)

回路

図2にAS3935のブロック図を示しました。アナログフロントエンド(AFE)には外部アンテナを直接接続します。AFEが受信信号を増幅して復調します。ウォッチドッグはAFEの出力を絶えず監視していて、信号が入ってきたら雷アルゴリズムブロックへ警告を発します。雷アルゴリズムブロックは信号パターンを調べて、その信号が本当に雷に起因する信号なのかどうかを検証します。雷アルゴリズムブロックは、落雷に起因する信号と、人為的なノイズ源(いわゆるディスターバー)に起因する信号とが区別できます。人為的ディスターバーであった場合は無視され、自動的にリスニングモードへ戻ります。落雷であった場合は、統計的距離推定ブロックが嵐の前縁までの距離を推定します。

LC発振器と較正ブロックとを組み合わせてTRCO、SRCOの両クロックジェネレーターを較正することで、製造工程のばらつきの補正を可能にしています。

動作モード

パワーダウンモード

(略)

リスニングモード

(略)

信号検証モード

(略)。ウォッチドッグ閾値を超えるたびに毎回、信号検証モードへ移行します。ウォッチドッグ閾値レジスタ0x01[3:1]で設定できます。信号がディスターバーであった場合は、その信号処理がすぐに中断されてリスニングモードへ戻ります。それ以外の場合は、エネルギーが計算され、推定距離が示されます。

レジスタテーブル

図22: レジスタテーブル
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レジスタテーブルの説明とデフォルト値

図23: 詳細レジスタマップ
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SPI

(略)

SPIの最大クロック動作周波数は2 MHzです。

註: 基板上に発生する500 kHzのノイズは極力小さくしたいので、SPIのクロック動作周波数はアンテナの共振周波数(500 kHz)と同じにはしないでください。

図24: SPIの各ピン
(略)

註: (略)

SPIのコマンド構造

SPIを有効化するときはCSピンをLoにしなければなりません。1個のSPIコマンドは、連続した2バイトで構成されます。SCLKの立ち下がり端でデータがサンプリングされます(CPHA=1) (訳註: クロックはアイドル時Lo、立ち下がり端でサンプリング、立ち上がり端でシフト。いわゆるモード1 (0,1)のこと)。図25に、先頭のMSB (B15)からLSB (B0)までのコマンド構造を示します。コマンドを送信する必要のある場合も、やはりMSBファーストです。

図25: MSB (B15)からLSB (B0)までのコマンド構造
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先頭の2ビット(B15、B14)で動作モードが決定されます。「読み出しモード」「書き込み/ダイレクトコマンド」という2つのモードがあります。

図26: B15、B14
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(略)

図27: B13~B9 (訳註: 正しくはB13~B8)
(略)

レジスタデータを書き込む

図28: SPIのページ書き込み
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アドレスで指定したレジスタからデータを読み出す(読み出しモード)

マイコンからAS3935のMOSIピンへレジスタのアドレスを送信すると、AS3935のMISOピンからマイコンへデータが送信されます。読み出しセッションが終了したら、CSピンをHiにして読み出しコマンドを終了する必要があります。これで次のコマンドの受け付けが可能な状態となります。連続したアドレスに複数のバイトを転送するときは、データを読み出す必要のある限り、SPIマスターのCS信号はLoのままにし、SCLKは有効にし続ける必要があります。

図29: SPIによるバイト読み出し
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ダイレクトコマンドバイトを送信する

下表に示したように、0x3C0x3Dの各レジスタに0x96を書き込むことで、ダイレクトコマンドが送信できます。

図30: レジスタ0x3C0x3D
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I2C

(全部略)

電圧レギュレーター

(略)

アナログフロントエンド(AFE)とウォッチドッグ

AFEは、アンテナの拾ったAC信号を増幅して復調する働きをします。AS3935は、中心周波数500 kHz、帯域幅約33 kHzの狭帯域受信技術を利用しています。AFEの利得は、アンテナの帯域幅の範囲であれば一定であると見なせます。AFEの帯域幅をアンテナの帯域幅よりも広くしているからです。

AFEの利得は、図39に示したように2つの動作環境に合わせて最適化してあります。デフォルトは屋内です。周囲の環境に応じてAFEの利得を設定することは非常に大切です。そうしないと、望ましい結果が得られません。

図39: AFEの設定(屋外、屋内)
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AFEの出力信号はウォッチドッグが監視します。信号がウォッチドッグ閾値WDTHを超えると、AD3935は信号検証モードへ移行します(「信号検証」を参照)。この閾値レジスタ0x01[3:0]で設定できます。閾値を高くすれば、ディスターバーの影響は受けにくくなりますが、遠く離れた雷活動に起因する比較的弱い信号に対しては感度が落ちます。WDTHの設定をさまざまに変えたときの感度の落ち具合を、落雷発生距離の函数として図40に示しました。

図40: WDTHの設定をさまざまに変えたときの検出効率と距離との関係(SREJ=0000の場合)
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ノイズフロアレベルの測定と判定

AFEの出力信号はノイズフロアレベルの測定にも使われます。ノイズフロアレベルは、基準電圧(ノイズ閾値)と絶えず比較されていて、ノイズ閾値を超えたときには、アンテナに受信された入力ノイズ(ブロッカーなど)が大きすぎるせいでAS3935が正しく動作できないことを外部ユニット(マイコンなど)に示す手段として割り込み(INT_NH)が発生します。ノイズフロアの限界値を定める閾値は、図41に示したようにレジスタ0x01[6:4]で設定できます。

図41: ノイズフロア閾値の設定
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INT_NHは、入力ノイズレベル(ブロッカー)がノイズフロア閾値よりも高い場合は常に発生し続けます。デフォルトでは、レジスタ0x01[6:4]=010という設定値が使われます。

アルゴリズム

アルゴリズムはハードウェアとして作り込まれています。人為的なディスターバーなど、雷ではない現象は除去されますが、雷の発生が検知されたときには、嵐の前縁までの距離を推定するための計算が開始されます。

アルゴリズムは霜の3つのサブブロックで構成されます。

  1. 信号検証: 入力された信号が雷であるかどうかを検証する。
  2. エネルギー計算: 個々の雷のエネルギーを計算する。
  3. 統計的距離推定: 保存された雷発生回数に応じて推定距離を計算する。

入ってきた信号が、雷の特徴を示す形状をしていない場合は、信号検証は行われず、ディスターバーであると判定されます。その場合、エネルギー計算も統計的距離推定も実行されず、自動的にリスニングモードに戻ります。

落雷から次の落雷までの時間が約1秒あいていれば、別々の落雷であると見分けられます。

信号がディスターバーであると判定されたときには、その時点から1.5秒間、AS3935は休止状態となります。ディスターバー信号の継続時間にはばらつきがありますが、こうした休止時間が設けてあるため、ディスターバーイベントが長引いたときでも判定処理が繰り返されずに済みます。

信号検証

信号検証フェーズでは、入ってきた信号の形状が分析されます。AS3935は、落雷の信号パターンと、人為的ディスターバート(ランダムインパルスなど)とが区別できます。ウォッチドッグ閾値だけでなく、レジスタ0x02[3:0]のスパイク除去設定SREJを使えば、こうしたディスターバーに起因する誤報が防ぎやすくなります。この値はデフォルトでは0x02[3:0]= 0010に設定してあります。値を大きくすれば、ディスターバーは除去しやすくなりますが、そのぶん検出効率が落ちるという欠点が生じます。図42に、SREJの設定をさまざまに変えたときの検出効率を距離の函数として示しました。

図42: SREJをさまざまに変えた時の検出効率と距離との関係(WDTH=0001の場合)
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信号検証が終わると自動的にリスニングモードへ戻ります。

エネルギー計算

受信信号が雷であると判定された場合は、そのエネルギーが計算されます。このエネルギー計算の結果は、格納されます。この値は、単なる数字であって物理的な意味はありません。

統計的距離推定

AS3935は、接近している嵐の前縁までの距離が推定できます。この推定は、統計的計算によって実行されます。嵐の前縁までの推定距離は、統計的距離推定ブロックで計算されます。AS3935の内部メモリーには、タイミング情報と一緒にエネルギー計算ブロックの出力が格納されます。このメモリーに格納されたすべてのイベントとルックアップテーブルとが照合され、嵐の前縁までの推定距離が出力されます。古いデータは自動的に消去されます。

推定距離はレジスタ0x07[5:0]出力されます。バイナリーデータと距離(キロメートル)との関係を図43に示します。レジスタ0x07[5:0]の値が変化するのは、嵐が近づくか遠ざかるかして嵐の前縁までの推定距離が統計的距離推定によって更新された場合だけです。統計的距離推定アルゴリズムはハードウェアとして作り込んであるため、外部からはアクセセスできません。

推定距離は、キロメートル単位(2進数表現)で0x07[5:0]から直読できます。AS3935の動作を引き起こす新たなイベントが発生しなくても、古いイベントは消去されることがあるため、推定距離は変化することがあります。

図43: 推定距離
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計算されたエネルギーは、0x04[7:0]0x05[7:0]0x06[4:0]の各レジスタに格納されます。

割り込みの管理

何かイベントが発生すると、AS3935のIRQ信号がHiになるとともに、レジスタ0x03[3:0]に割り込みが要因が書き込まれます。図44に割り込みレジスタを示します。IRQ信号がHiになったあと2 ms待たないと割り込みレジスタは読み出せません。IRQ信号は、割り込みレジスタから読み出すとLoに戻ります。

図44: 割り込み
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「ノイズフロアレベルの測定と判定」セクションで述べたように、レジスタ0x01[6:4]で設定した閾値をノイズレベルが超えた場合に割り込みINT_NHが発生します。ノイズレベルがこの閾値よりも高い状態にある限り、INT_NHは消えません。

割り込みINT_Dは、入ってきた信号がディスターバーであると判定された場合に発生します。レジスタ0x03[5]のMASK_DISTを有効にすれば(0x03[5]=1にすれば)、INT_Dは発生しません。MASK_DISTを有効にした場合は、たといディスターバーであると判定されてもIRQ信号はHiになりません。

新たなイベントが検出された場合は雷割り込み(INT_L)が発生します。新たなイベントはすべて、内部メモリーに格納され、雷統計データとして蓄積されます。このデータが距離推定アルゴリズムに使われます。何らかの割り込みが発生したのに、割り込みレジスタ0x03[3:0]=000の場合は、統計データに含まれていた古いイベントが雷距離推定アルゴリズムによって消去されたせいで推定距離が変化したことを表しています。

また、過去15分間に検出されたイベント(雷)の回数が、設定しておいた最小回数に達した場合のみ雷割り込みを発行するようにもできます。雷イベントの最小発生回数はレジスタ0x02[5:4]で設定できます。

図45: 雷の最小検出回数
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この機能を利用すると、雷イベントの最小検出回数に達しない限り、雷割り込みは発生しません。最小検出回数を超えた場合は、通常の割り込み処理が再開されます。このしくみによって、検証アルゴリズムを素通りしかねない人為的ディスターバーによる誤作動が防げます。雷距離推定アルゴリズムブロックに蓄積された統計データは、レジスタ0x02[6]をHi→Lo→Hiとトグルすれば消去できます。

アンテナの調整

AS3935は、並列LC共振器によるループアンテナを使います。このアンテナは、共振周波数500 kHz、Q値約15になるよう設計しなければなりません。レジスタ0x08[7]=1にすると、アンテナの共振周波数がディジタル信号としてIRQピンに出力されます。この周波数を測定し、レジスタ0x08[3:0]で内部キャパシタを増やすか減らすかすれば、アンテナの調整ができます。信号検証および距離推定の性能を最適化するためには、±3.5%確度が得られるようアンテナを調整する必要があります。共振周波数は、レジスタ0x03[7:6]で設定できる係数によって内部分周されます。図46にその分周比を示します。(訳註: デフォルトで16分周されているので、結局500 kHz/16 = 31.25 kHzになるように調整する)

図46: アンテナを調整するための分周比
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クロックの生成

クロックの生成には、2つの異なるRC発振器が使われます。1つはシステムRCO (SRCO)、もう1つはタイマーRCO (TRCO)です。SRCOは、発振周波数が約1.1 MHzであり、ディジタル回路全体のメインクロックを供給します。TRCOは、低パワー、低周波数の発振器であり、発振周波数は32.768 kHzです。この2つの発振器の発振周波数は、温度変化によって変動しますが、自動的に補償されます。

この2つの発振器の出力周波数は、IRQピンから出力できます。レジスタ0x08[5]=1にすればTRCOが、レジスタ0x08[6]=1にすればTRCOが、それぞれ出力されます。製造工程にはばらつきがあるため、どちらの発振器の周波数も公称値と違うことがあります。そのため、両方ともダイレクトコマンドで較正できます。較正の精度は、アンテナの共振周波数の確度に依存します。各発振器の較正をする前に、まずは受信アンテナを調整することを勧めします。

0x3A[7:6]0x3B[7:6]の各レジスタにはそれぞれ、TRCO、SRCOの各発振器の較正ステータスが格納されます。較正処理が正常に完了すると、TRCOの場合は0x3A[7]が、SRCOの場合は0x3B[7]がHiになります。較正処理の最中に何か問題の起きると、TRCOの場合は0x3A[6]が、SRCOの場合は0x3B[6]がHiになります。

2つの発振器の較正結果は、揮発性メモリーに格納されるため、バッテリーを交換するなどしてPORのかかったあとは毎回実行する必要がありますが、温度および電源電圧の変動については、どの発振器も内部補償されます。

パワーダウンモードにした場合は、下の手順でTRCOを較正し直す必要があります。

  1. ダイレクトコマンドCALIB_RCOを書き込む。
  2. レジスタ0x08[6]=1に書き換える。
  3. 2 ms待つ。
  4. レジスタ0x08[6]=0に書き換える。

避けるべきノイズソース

下記のノイズソースは、誤検知の原因になりやすいため避けてください。

  • DC-DCコンバーターに使われているインダクタ。DC-DCコンバーターをミューメタル製のシールドで完全に覆う場合は別ですが、こうしたDC-DCコンバーターによって発生する磁場からAS3935のアンテナを遮蔽するのは難しい。
  • スマートフォンのディスプレイ、スマートウォッチのディスプレイ。
  • AS3935のアンテナの共振周波数である500 kHzで動作しているSPI。

一般の測候所では、湿度や圧力に応じてAS3935をパワーダウンモードにすれば、消費電力が節約できるとともに誤報も防げます。

パッケージの図面 & マーキング

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注文情報 & お問い合わせ先

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RoHS指令への準拠 & ams社のグリーンステートメント

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コピーライト & 免責条項

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改訂情報

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