茄(なす)
season 2 7/12
ナス
ナス科ナス属の植物
草冠に「くわえる」と書いて「茄」。8画の世界からしたたり落ちるその芳醇なうるおい。ヘタからぶら下がる君はボディービルダーのようにあでやかに黒光りしている。インドが原産とされ、奈良時代に日本にやってきた君は親しみを込めてこう呼ばれていたね。なすび。何でなすびかって? 夏に実がなることから「夏実(なつみ)」。汗ばむシャツがお似合いの女性を思わせるその響。それがちょっとだけ変わって「なすび」。「な」しか合ってないって? 細かいことを気にするもんじゃないよ。君にはいつも驚かされる。スパゲッティーの中の君。マーボーの中の君。漬け物の君。そして、ただ焼いただけの君。君はいつだって何にだってなり得た。そう、そんな君は植物界の名優、ロバート・デ・ニーロ。役のために苛酷な減量、増量に励み、頭髪まで抜いた。デ・ニーロの徹底した役作りをいつしか人はこう呼んだ。「デニーロ・アプローチ」と。ああ、茄、君も畑でデニーロ・アプローチをしていたのかね。最後に君にこんな名前をあげるよ。ナス・コリオーネ。